OpenAI Presenceとは?電話・チャット対応をAIへ任せる仕組みと人の役割

OpenAIが企業向けの電話・チャット対応AIを発表した

OpenAIは2026年7月22日、企業向けAIエージェント「OpenAI Presence」を発表しました。電話やチャットで質問へ答えるだけでなく、本人確認や社内情報の参照、許可された操作まで進め、必要な場面では人の担当者へ引き継ぐ製品です。OpenAIの製品発表

対象になるのは、請求の確認、保険金請求、社内IT窓口のように、同じ流れを何度も処理しながら、間違えたときの影響も大きい仕事です。企業が使える知識と操作権限を決め、AIだけで処理しない条件も設定します。

この記事では、Presenceが従来のチャットボットと何が違うのか、AIへ任せられる範囲、人へ引き継ぐ条件、日本語対応と提供状況を整理します。なお、PresenceはChatGPTの設定画面から作るエージェントではなく、OpenAIや導入パートナーと個別に構築する企業向け製品です。

3分で把握

Presenceは「答えるAI」から「処理を完了するAI」へ広げる製品です

企業が許可した範囲だけで動き、判断が必要な問い合わせは人へ渡します。

対応方法

電話とチャット

顧客向け窓口と社内問い合わせの両方を想定しています。

できること

確認から操作まで

社内システムを使い、許可された処理を実行します。

人の役割

判断と例外対応

高リスク、規定外、感情的な不満は人へ引き継ぎます。

提供状況

対象企業を限定

セルフサービスではなく、個別に設計して導入します。

出典: OpenAI製品発表、OpenAI Help Center。2026年7月30日時点。

従来のチャットボットとの違いは、社内システムを操作すること

従来のチャットボットは、用意されたFAQから回答を探し、解決できなければ問い合わせフォームや人の窓口を案内する使い方が中心でした。Presenceは、回答した後の業務処理まで対象にします。

従来型チャットボット

案内と回答が中心

知識: FAQや登録済みの回答

操作: 外部ページや人の窓口を案内

改善: 会話文や回答集を更新

OpenAI Presence

業務処理と引き継ぎまで

知識: 許可された社内情報を参照

操作: システムを更新し、承認済みの処理を実行

改善: 実運用の記録から変更案をテスト

たとえば請求の問い合わせなら、利用者の話を理解し、本人確認を行い、契約情報を調べ、会社の規定に沿って処理します。返金や契約変更のような操作は、企業が許可した範囲だけです。AIが自由に社内システムを操作するわけではありません。

OpenAI Help Centerによると、企業はAIが従う業務手順、利用できる情報、操作権限、承認が必要な処理、人へ渡す条件を導入ごとに決めます。会話が自然かどうかだけでなく、権限管理と操作履歴まで含めて運用するのがPresenceです。

問い合わせは「理解・確認・操作・引き継ぎ」の順に進む

Presenceが目指しているのは、何でも一度に任せる仕組みではありません。1つの問い合わせを段階に分け、各段階で許可と停止条件を確認します。

  1. STEP 1

    問い合わせの内容を理解する

    請求、契約、保険、社内ITなど、依頼の種類と必要な情報を確認します。

  2. STEP 2

    本人確認と社内情報の参照を行う

    必要な情報だけを使い、契約内容や対応履歴を調べます。

  3. STEP 3

    会社が許可した操作を実行する

    情報の更新や承認済みの処理を行い、結果を利用者へ伝えます。

  4. 必要な場合

    判断材料を付けて人へ引き継ぐ

    規定外、高リスク、本人確認の失敗、感情的な不満などを人の担当者へ渡します。

人へ渡すときに、それまでの会話、確認済みの情報、試した処理を一緒に渡せれば、利用者が最初から説明し直す負担を減らせます。OpenAIは、引き継ぎ先へ整理された状況を渡す仕組みもPresenceの管理機能に含めています。

OpenAIの電話窓口では75%を人の支援なしで解決した

OpenAIは、自社の英語電話サポートでPresenceを使い、受け付けた問い合わせの75%を人の支援なしで解決していると説明しています。運用開始後には、Codexを使った改善工程によって、人への引き継ぎを10日間で15ポイント減らしたとも公表しました。

OpenAI英語電話窓口での自己申告

75%

人の支援なしで解決した問い合わせの割合

−15pt

10日間で減った人への引き継ぎ

OpenAIが自社窓口について公表した値です。対象件数、問い合わせの内訳、第三者による検証結果は公開されておらず、他社で同じ結果を保証する数字ではありません。

この数字から確認できるのは、条件を絞った実運用で、多くの問い合わせをAIだけで終えられたことです。どの企業でも75%を達成できるわけではありません。問い合わせの難しさ、社内システムの整備、AIへ許可する操作、人へ渡す条件によって結果は変わります。

AIが増えても、人は複雑な判断と不満への対応を担う

カスタマーサポートでAIが処理する件数は増えても、人の担当者がすぐ不要になるとは限りません。企業側は、定型的な確認をAIへ移し、人には規定外の判断、感情的な不満、関係修復のような仕事を持たせ始めています。

サービス責任者の85%が人の職務拡大を進める一方、31%がAIによる人員削減を実施または計画し、顧客の54%は推奨時にAIより人を信頼すると回答したグラフ
左右は調査対象と実施時期が異なります。左は世界のサービス責任者321人への複数回答、右は米国の顧客5,801人への別調査です。出典: Gartner、2026年4月28日

Gartnerが世界のサービス・サポート責任者321人へ行った調査では、85%が人の担当者へ新しい仕事や責任を加えていました。AIを理由とする人員削減を実施済み、または2027年第1四半期までに計画している回答は31%です。両方を進める企業もあるため、合計100%になる内訳ではありません。

同じGartnerの別調査では、製品やサービスの推奨を受ける場面で、米国の顧客の54%がAIより人を信頼すると回答し、人よりAIを信頼する回答は32%でした。処理速度が上がっても、契約やお金に関する判断では、人の説明を求める利用者が残ります。

2026年5月に公開されたAlibabaの顧客対応を対象にしたフィールド実験のプレプリントでも、AIは平均チャット時間を短くした一方、AIが担当した会話の評価は下がりました。技術的な問題は人が引き継ぐことで品質を保ちやすく、感情的な不満では早い介入が必要だったと報告しています。

Presenceを導入する企業が先に決めるべきなのは、AIの回答文よりも、人が何分以内に入り、どの情報を受け取り、どこから判断を引き継ぐかです。

SoftBankは自然な日本語の顧客会話をテストしている

日本との接点もあります。OpenAIの発表では、SoftBankがPresenceを使った自然な日本語の顧客会話をテストしており、現場の担当者が会話の自然さと正確さを評価していると説明されています。

確認できるのはテスト中という事実までです。日本での正式な提供開始日、対象となる窓口、料金、処理できる手続きは公表されていません。「SoftBankの電話窓口がすでにPresenceへ置き換わった」と受け取れる段階ではありません。

日本語の問い合わせでは、敬語の自然さだけでなく、契約名義、料金プラン、住所、本人確認の聞き間違いを防ぐ必要があります。実際の導入判断では、日本語の会話デモより、固有名詞と数字の認識、人への引き継ぎ、訂正履歴まで確認する必要があります。

Presenceは大量の反復業務を持つ企業向けで、セルフサービスではない

Presenceは、対象企業を限定した一般提供です。OpenAIの担当エンジニアまたは選定された導入パートナーが、業務の選定、システム接続、権限、評価、セキュリティ・法務確認、段階的な公開まで支援します。

導入候補になりやすい

大量で反復的な問い合わせがある

  • 請求、契約、保険、社内ITなど処理結果が明確
  • 必要な社内システムをAPIやツールで接続できる
  • AIが止まる条件と人の引き継ぎ先を決められる

別の方法から始める

質問数が少なく、回答だけで済む

  • FAQを案内するだけで処理が完了する
  • 社内データや操作権限を安全に分けられない
  • 会話記録の確認と改善を担当するチームがない

価格、利用するモデル、処理できる件数、データの保存場所と期間も導入ごとに決まります。個人が月額プランへ加入して使う製品ではなく、企業がOpenAIの担当窓口へ相談して適合性を確認する仕組みです。

Presenceの価値は、AIの賢さより止め方と引き継ぎ方にある

OpenAI Presenceは、電話やチャットの回答を自然にするだけの製品ではありません。社内情報を参照し、許可された操作を行い、処理できない問い合わせを状況付きで人へ渡すところまでを1つの運用にまとめます。

利用者にとって助かるのは、営業時間を待たずに処理が進み、人へ代わっても説明を繰り返さずに済む状態です。反対に、AIが止まる条件や人への引き継ぎが弱ければ、会話が自然でも困りごとは解決しません。

企業がPresenceを検討するときは、「何件をAIへ任せるか」より先に、「どの操作まで許可し、どの失敗で人が入り、結果を誰が確認するか」を決める必要があります。Presenceの発表は、カスタマーサポートの競争が会話の自然さから、業務を安全に終わらせる設計へ移り始めたことを示しています。

参考資料