Xcode 27.2が10月29日に正式公開|Device Hubのタッチ入力とシミュレータ操作の改善、更新前に確かめる3つの既知の問題

Appleが10月29日にXcode 27.2を公開。翌30日からApp Store Connectが27.2のビルドを受け付けている

Appleは2026年10月29日、Xcode 27.2(ビルド 27B52)を正式に公開しました。App Store Connectのリリースノートによると、翌30日から、Xcode 27.2と27.2のSDKでビルドしたアプリをApp StoreとTestFlightへ提出できます。

Xcode 27.2は、Swift 6.4と、iOS 27.2、iPadOS 27.2、tvOS 27.2、watchOS 27.2、macOS 27.2、visionOS 27.2のSDKを含みます。動かすにはmacOS Tahoe 26.6以降のMacが必要で、実機でのデバッグはiOS 17以降、tvOS 17以降、watchOS 10以降とvisionOSに対応します。

リリースノートを読むと、27.2の変更は、端末とシミュレータを扱うウィンドウ「Device Hub」の機能追加に集中しています。この記事では、リリースノートと公式ドキュメントにもとづいて、27.1から何が変わったか、Device Hubのタッチ入力とシミュレータ向けの操作、更新前に確かめる既知の問題をまとめます。

Xcode 27.2の要点4つ(リリースノートから)

Device Hubがタッチ入力に対応し、シミュレータ向けの操作も改善。提出はすでに受け付け中

2026年10月29日公開のXcode 27.2(27B52)。各項目の詳細は本文の節へ。

Device Hub

iPadの画面へのタッチを端末へ送る

Sidecarでつないだ iPad やタッチ搭載のMacBook Proの画面に触れると、タッチとして端末に届く。ピンチや回転も試せる。

シミュレータ操作

振る・落とす・メモリ圧迫を再現

リリースノートは改善として Simulate Shake、Simulate Fall、Simulate Memory Pressure、Slow Motion Animation を挙げる。

プロジェクト形式

JSON形式の .xcproj は正式版でも使える

File inspector で有効にする。.xcproj のプロジェクトはXcode 27の以前の版でも開ける。

必要な環境

macOS Tahoe 26.6 以降

Swift 6.4 と各27.2 SDKを同梱。実機デバッグは iOS 17 以降。

27.1との違いは、Device Hubの機能追加と、Previews・シミュレータの修正が中心

一つ前のXcode 27.1のリリースノートは、概要(Swift 6.4、iOS 27.1 SDKとそれ以外は27.0 SDK、macOS 26.6以降)のほかは、Previewsの新機能1件(キャンバスのオーバーライドに「Display」のグループが加わり、端末の別の画面向けにプレビューできる)、Mac Catalystの既知の問題2件、シミュレータの既知の問題4件で、Device Hubの項目はありません。27.2のリリースノートは、Device Hub、Instruments、Interface Builder、Mac Catalyst、Memory Gauge、Previews、Project Format、SDK、Simulator、XCTest UI Automationの10項目に分かれ、新機能と修正の両方が載っています。

27.1と27.2のリリースノートの中身

Appleのリリースノートの項目を、新機能・修正・既知の問題に分けて並べた。

Xcode 27.1

新機能の節1つ、既知の問題の節2つ

Swift 6.4、iOS 27.1 SDK(ほかは27.0)、macOS 26.6以降。新機能: Previews(キャンバスのオーバーライドにDisplayグループ)。既知の問題: Mac Catalyst 2件(27.1固有のAPIでコンパイルエラー、27.1をターゲットにするとMac Catalystの実行先が出ない)、シミュレータ4件(初回起動に数分かかる、iPhone DuoシミュレータでStandByが使えない、iPhone Duoで多くのApp Extensionを実行・デバッグできない、CameraCaptureAccessoryを使うアプリがカメラのキャプチャ中でなくても両画面を同時に使える)。

Xcode 27.2

新機能の節2つ、修正の節7つ、既知の問題の節4つ

新機能: Device Hub(タッチ入力とシミュレータ操作)、Project Format(.xcproj)。修正: Device Hub、Instruments、Interface Builder、Memory Gauge、Previews、Simulator、XCTest UI Automation。既知の問題: Device Hub、Mac Catalyst、SDK、Simulator。

出典: Xcode 27.1/27.2 リリースノート(Apple)。節の数は「New Features」「Resolved Issues」「Known Issues」の見出しで数えた。

27.1でシミュレータの既知の問題だった「iPhone DuoシミュレータでStandByが使えない」に対応する形で、27.2のDevice Hubの改善には「iPhone DuoのStandby対応」が載っています(両者の対応づけは筆者の照合)。27.1の既知の問題だった、CameraCaptureAccessoryを使うアプリがカメラのキャプチャ中でなくても両画面を同時に使える問題は、27.2のシミュレータの修正に入っています。

Previewsの修正では、Windows形式の改行(CRLF)を含むファイルでプレビューが失敗する問題と、別のユーザーアカウントがプレビュー用のディレクトリを所有しているときに、復旧手順付きの分かりやすいエラーを表示するようになりました。MCP(AIエージェントがXcodeの機能を呼び出す仕組み)のRenderPreviewツールは、描画先(どの端末向けに描くか)の一覧を返し、呼び出し側が描画先を指定できるようになりました。シミュレータでは、削除したランタイム(シミュレータ用のOSイメージ)が再起動後に戻ってくる問題と、入れ直したランタイムが利用不可と表示される問題が直っています。

Device Hubは、SidecarのiPadやタッチ搭載MacBook Proからのタッチをそのまま端末へ送る

Device Hubは、Xcode 27で、シミュレータと実機を一覧し、画面を表示して操作するウィンドウです。Macのポインタからの操作は、公式ドキュメントによると今もタップはクリック、長押しはクリックの長押しで代用します。27.2では、SidecarでつないだiPad、またはタッチ搭載のMacBook Proの画面に触れると、その操作がタッチとしてDevice Hub上の端末へ届きます。リリースノートは、これでピンチや回転のような複数の指を使うジェスチャを試せる、と説明しています。

同じ週の10月28日には、AppleがTouch on Macの開発者向け資料(動画3本と、11月18日・19日のオンラインのGroup Labs)も公開しています。そのページで「Coming soon(近日公開)」とされていたXcode 27.3 beta(27C5020n)は、11月3日に公開されました。27.3 betaのリリースノートは、Device Hubの既知の問題として、SidecarまたはTouch対応のMacから端末へ送れるタッチは2点までで、3点以上はmacOSがシステムのジェスチャとして解釈すると記し、回避策に、設定のTouch Display(タッチディスプレイ)でタッチジェスチャをオフにすることを挙げています(185140491)。Device Hubのタッチ入力が届く先はシミュレータや実機で動くアプリで、Macアプリ自体のタッチ対応はTouch on Macの資料とXcode 27.3 betaの範囲です。

Device Hubでタッチ入力を試す流れ

リリースノートとDevice Hubのドキュメントの記述を順に並べたもの。Device Hubのウィンドウをどの画面に置くかは、リリースノートに記載がない。

1

iPadをSidecarでつなぐ

iPadをMacの外部ディスプレイにする。タッチ搭載のMacBook Proなら本体の画面でよい。

2

Device Hubで端末の画面を表示する

アプリを実行するとコンパクトウィンドウが開く。サイドバーで端末を選び、キャンバスで View Screen を押しても表示できる。

3

iPadの画面に触れる

触れた操作がタッチとして端末へ届く。ピンチや回転のような2本指のジェスチャも送られる。

Device Hubのそのほかの改善として、リリースノートは、iPhone Duo(折りたたみ型のiPhone)のStandby表示、iOS 17.xのシミュレータへの入力、スクリーンショットのコンテキストメニュー、端末のベゼルを隠すオプション、起動中のシミュレータを終了するときの挙動の設定、ハードウェアキーボードの模擬、画面収録の保存先の設定などを挙げています。修正では、複数の端末ウィンドウを開いているとShiftやCommandなどの修飾キーが別の端末に送られる問題と、しばらく操作しないと実機へタッチやボタンの入力が届かなくなる問題が直っています。

リリースノートは、シミュレータ向けの改善として「振る」「落とす」「メモリ圧迫」「スローアニメーション」を挙げた

リリースノートは、Device Hubの改善の一覧(「multiple improvements」)の中で、シミュレータだけで使える操作を4つ挙げています。端末を振る動作(Simulate Shake)、落とす動作(Simulate Fall)、メモリ不足の状態(Simulate Memory Pressure)、アニメーションのスロー再生(Slow Motion Animation)で、いずれも「simulators only」と添えられています。振る操作については、Xcode 27のリリースノートに「Controls > Shake のメニューが動かない」という既知の問題が載っていました。あわせて、Device > Simulate Memory Warningのメニューが動かない問題も直っています。

27.2のリリースノートが挙げるDevice Hubの改善

リリースノートの一覧を、「simulators only」と付いたものと、そのほかに分けた。

シミュレータだけで使える

  • Slow Motion Animation(アニメーションのスロー再生)
  • Simulate Shake(振る)
  • Simulate Fall(落とす)
  • Simulate Memory Pressure(メモリ不足を再現)

そのほかの改善

  • Sidecar経由のタッチ入力
  • iPhone DuoのStandby表示
  • iOS 17.xシミュレータへの入力
  • スクリーンショットのコンテキストメニューとドラッグ&ドロップの改善
  • ベゼルを隠すオプション
  • 起動中のシミュレータの終了時の挙動、キーボードショートカットの挙動の設定
  • Secure Keyboard Entry、ハードウェアキーボードの模擬
  • 画面収録の保存先の設定

出典: Xcode 27.2 リリースノート「Device Hub」の New Features(188634387、189236369)。

更新前に確かめる既知の問題は3つ。デプロイメントターゲット27.1、Mac Catalyst、27.2ランタイムの複製

27.2の既知の問題は4つの節にあり、そのうちビルドの設定やシミュレータの運用に影響するものを3つ挙げます。Mac Catalystとシミュレータの2件にはAppleが回避策を示していて、デプロイメントターゲットの1件は、リリースノートに回避策の記載がありません。

既知の問題と対処(Xcode 27.2 リリースノート)

1. デプロイメントターゲット

macOS・watchOS・tvOS・visionOSのSDKが「27.1」を有効な値として誤って表示する

27.1を指定するとビルドなどが想定外の動きをすることがある。Mac Catalystで27.1や27.2をターゲットにすると、新しいAPIを使えないことがある(187160501)。対処(筆者の整理): リリースノートに回避策の記載がないため、27.1をデプロイメントターゲットに選ばず、Mac Catalystで27.1や27.2をターゲットにする場合は新しいAPIの利用を確かめる。

2. Mac Catalyst

iOS 27.1固有のAPIを使うと、Mac Catalyst向けのビルドでコンパイルエラーになる

「undeclared identifier」「not found」「has no member」「cannot find」などのエラーが出る。回避策: 該当コードを #if !targetEnvironment(macCatalyst)(Swift)または #if !TARGET_OS_MACCATALYST(Objective-C)で囲む(185924957)。27.1から続く問題。

3. シミュレータの複製

27.2ランタイムのシミュレータを複製すると、ファイルの権限が原因で失敗することがある

回避策: 複製元の端末のデータディレクトリで、名前が *.sb-????????-?????? のファイルを削除してから複製する(188407822)。コマンドは下記。

# 既知の問題3の回避策(Apple のリリースノートより。<SOURCE_UDID> は複製元のシミュレータのID)
find ~/Library/Developer/CoreSimulator/Devices/<SOURCE_UDID>/data -name '*.sb-????????-??????' -delete

このほかDevice Hubには、「Secure keyboard entry」(Device Hubが端末へ送る前に、ほかのアプリがキーボード入力を横取りするのを防ぐ設定)は「Capture Keyboard」と同時に使えない、CarPlayの表示はUSBケーブルで接続した実機だけで、iOSシミュレータでは使えない、iPhone Duoのスクリーンショットと収録が起動後しばらく黒くなる、iOS 18以前の端末では文字サイズを変えられない、といった既知の問題が載っています。

JSON形式のプロジェクトファイル .xcproj は正式版でも使える。File inspector で有効にする

27.2 betaで加わったJSON形式のプロジェクトファイル(.xcproj)は、正式版のリリースノートにも新機能として載っています。リリースノートは、従来の形式より読みやすく、マージしやすく、コーディングエージェントが編集しやすい形式とし、File inspectorで有効にすると説明しています。.xcprojのプロジェクトは、Xcode 27の以前の版でも開けます。形式の中身と、切り替え前に確認する点は、27.2 betaの時点で書いた記事にまとめています。

更新の判断は、macOSのバージョン、提出先の受け付け、既知の問題の3段で決める

Xcode 27.2へ更新するかの判断

1. Macの条件

macOS Tahoe 26.6 以降か

満たさなければ先にmacOSを更新する。満たしていれば次へ。

2. 提出先

App Store Connectは10月30日から27.2のビルドを受け付けている

正式版でビルドしたアプリをそのまま審査に出せる。RC版のビルドは10月20日から受け付けていた。

3. 既知の問題

27.1をデプロイメントターゲットに選ばず、Mac Catalystは27.1 APIを条件で囲む

当てはまるプロジェクトは対処を入れてから更新する(デプロイメントターゲットの対処は筆者の整理、Mac Catalystの回避策はApple)。シミュレータの複製はエラーが出たらAppleのコマンドで対処する。

Xcode 27.2は、App Storeへの提出に使える正式版で、Device Hubのタッチ入力とシミュレータ向けの操作の改善が主な変更です。更新前に見るのは、Macのバージョン、デプロイメントターゲットに27.1を使っていないか、Mac Catalystで27.1固有のAPIを使っていないか、の3点です。

今回のリリースで便利だと思うのは、Device HubのSidecarタッチ入力が正式版に入った点です。iPadを持っているなら、27.2に上げた時点で、シミュレータや実機で動く自分のiOSアプリのピンチや回転を、マウスの代わりに指で確かめられます。Macアプリ自体のタッチ対応は、Touch on Macの資料とXcode 27.3 betaの案内に沿って進めるのがよさそうです。