WordPress 7.2の新しい既定テーマ「Ipsum」を試した|年号をやめた白紙のブログテーマと、更新しても既存サイトのテーマが変わらない理由

WordPress 7.2のベータ版に、年号の名前をやめた新しい既定テーマ「Ipsum」が入った

WordPressの開発を取りまとめるMake WordPress Coreで2026年9月16日、既定テーマのデザインリードを務めるHenrique Iamarino氏が、次の既定テーマ「Ipsum」を提案しました。テーマは10月22日にWordPress本体の開発版へ同梱され(wordpress-developのコミット、変更セット64677)、10月27日に公開された7.2 Beta 2から試せます(ベータ版は本番サイトには入れず、検証用のサイトで使います)。7.2のスケジュールでは、最初のリリース候補(RC1)が11月17日、正式公開が12月8日です。Beta 3は10月28日、セキュリティ更新のWordPress 7.1.4と同じ日に、その修正を含めて公開され、11月3日にはBeta 4が出ました。Beta 4の告知が挙げるIpsumの変更は、キーボード操作時のフォーカス表示、読み上げソフト向けのリンク文言、右から左へ書く言語への対応の改善と、ブロックパターン、タッチ操作の間隔、ほかの既定テーマとの配色の互換性の微調整です。

既定テーマは、WordPressを新しくインストールしたときに最初から有効になっているテーマです。2010年のTwenty TenからTwenty Twenty-Five(2025)まで、既定テーマは年の名前を持ってきました。Ipsumは、原稿が届くまでページを埋める仮の文章「lorem ipsum」から名付けられています。紹介記事によると、これからの既定テーマは暦ではなく、設計が変わるときに名前を変えます。

この記事では、コンテナ型の仮想環境Dockerに立てたWordPress 7.1.4のサイトを7.2 Beta 2へ更新してIpsumを有効にし、さらにBeta 3へ更新して、初期の投稿1件だけの状態の画面、7つの配色、パターンとテンプレートの構成、既存のサイトを更新したときに起きることを確かめました。Twenty Twenty-Fiveのまま7.1.4で動いているサイトとも並べています。

3分で把握

書くための白紙と、本文の書体まで切り替わる配色。既存のサイトは更新しても変わらない

WordPress 7.2 Beta 3(Ipsum 1.0)を検証用のサイトで確かめた結果です。

設計

ブログのための白紙

初期画面はサイト名、ナビゲーション、投稿本文だけ。ヘッダーの飾り、ヒーロー、サイドバーは、57のパターンと11のテンプレートから必要なときに足す。

スタイル

7つの配色と5つの書体

配色を選ぶと背景と文字だけでなく本文の書体も切り替わり、サイトロゴなどの画像は配色ごとの2色に塗り替わる。

既存サイト

更新しても変わらない

7.1.4から7.2へ更新したサイトはTwenty Twenty-Fiveが有効のままで、Ipsumはテーマ一覧に加わるだけ。Ipsumが最初から有効になるのは新規インストール。

Ipsumは、最初の画面に何も足さない「白紙」として設計されている

紹介記事はIpsumを「ブログを書く体験を中心に据えた白紙(a blank canvas built around the blogging experience)」と説明しています。ヘッダーの飾り、ヒーロー、サイドバーは使いたいときに足せるものとして用意し、書いている間は邪魔をしない方針です。紹介記事によると、この企画は書き手や作り手のための表現の多いテーマ「Mētis」として始まり、7.2のリリースリードを務めるWordPressの共同創設者Matt Mullenweg氏(紹介記事では「Matt」)とのレビューを経て、より簡素な白紙の方向に変わりました。Mētisは別のテーマとして続き、7.2には入りません。テーマの説明書き(readme.txt)には、Automatticが公開していたテーマ「Ichi」を土台にしたことも書かれています。

左は WordPress 7.1.4 の Twenty Twenty-Five、右は 7.2 Beta 2 の Ipsum。どちらも初期の投稿1件だけのホーム。Ipsum はサイト名とナビゲーションと投稿本文だけで、見出しの Blog やフッターの大きなメニューがない
初期の投稿1件だけの状態のホーム。左が7.1.4のTwenty Twenty-Five、右は同じ状態のサイトを7.2 Beta 2に更新してIpsumを有効にしたもの(新規インストール直後と同じ内容)。Docker上のWordPress(PHP 8.3、MariaDB 11)で2026年11月2日に確認。

Ipsumのホームには、左上にサイト名、右上にナビゲーション、その下に投稿の本文が並びます。投稿ごとに日付とカテゴリ、コメントへの呼びかけが付き、右下には検索ボタンが置かれます。Twenty Twenty-Fiveにあった「Blog」の見出しや、フッターの大きなリンク一覧はありません。本文の幅は640px、幅広の要素は1280pxで、リンクには、紹介記事が「編集者の鉛筆」になぞらえる点線の下線が付きます。コメントへの呼びかけは、コメントがなければ「Be the first to comment」、あれば「Join the conversation」に自動で変わります。テーマが登録したブロックバインディング(表示する文字をPHPの関数の結果に結びつける仕組み)で、件数を見て文言を選んでいます。

配色を選ぶと、色だけでなく本文の書体まで切り替わる

配色と書体はサイトエディターの「スタイル」から選びます。Ipsumには配色のバリエーションが7つ(Blue Hour、Sunrise、Morning、High Noon、Golden Hour、Evening、After Hours)、書体のバリエーションが5つ(Archivo Condensed、Archivo、Besley、JetBrains Mono、STIX Two Text)入っています。手元で配色を順に切り替えて同じ投稿を表示したのが次の画面です。

同じ投稿ページを、既定、Blue Hour、Sunrise、Morning、High Noon、Golden Hour、Evening、After Hours の8通りで表示した画面の並び。背景色と文字色が変わり、Golden Hour ではアイキャッチ画像も赤系の2色に塗り替わっている
同じ投稿を既定と7つの配色で表示。アイキャッチ画像はテーマに同梱された画像(Midjourneyで生成、CC0)。7.2 Beta 3で2026年11月2日に確認。

配色の設定ファイル(styles/colors/の7つのJSON)を読むと、各配色は背景・文字・アクセントの色に加えて、本文の書体も指定しています。Blue Hourは明朝系のSTIX Two Text、High Noonは等幅のJetBrains Mono、Golden HourはManropeという具合で、黒背景のEveningだけは色の指定にとどまり、書体は既定のInterのままです。配色を切り替えると本文の見た目が次のように変わります。

同じ投稿の本文の部分を8通りの配色で切り抜いた並び。既定と Evening は Inter、Blue Hour は STIX Two Text、Sunrise は Besley、Morning と After Hours は Archivo、High Noon は JetBrains Mono、Golden Hour は Manrope と、配色ごとに本文の書体が変わっている
同じ投稿の本文部分の切り抜き。配色ごとに本文の書体が変わる。7.2 Beta 3で2026年11月2日に確認。

Blue Hour

背景 文字 強調

本文 STIX Two Text(明朝系)。アイキャッチ画像も2色化。

Sunrise

背景 文字 強調

本文 Besley(明朝系)。

Morning

背景 文字 強調

本文 Archivo(ゴシック系)。

High Noon

背景 文字 強調

本文 JetBrains Mono(等幅)。

Golden Hour

背景 文字 強調

本文 Manrope(ゴシック系)。アイキャッチ画像も2色化。

Evening

背景 文字 強調

色の指定だけ。本文は既定のInterのまま。

After Hours

背景 文字 強調

本文 Archivo、見出し Archivo Condensed。

出典: テーマの styles/colors にある7つのJSON(Ipsum 1.0、WordPress 7.2 Beta 3に同梱)。色の値はJSONの theme-1(背景)、theme-2(文字)、theme-3(強調)。Beta 4では名前がbase・contrast・accent-1に変わり、値は同じ。既定の配色は背景 #fcfcfc、文字は黒の75%、強調 #3355ff、本文 Inter。Blue Hour、Sunrise、Morning、High Noonの文字色も不透明度75%の指定で、チップは不透明の色で表示。

紹介記事が「画像も含めてページ全体を塗り替える」と書いているのは、デュオトーン(画像を2色に置き換える効果)の仕組みです。テーマは「duotone-1」という2色のプリセットを1つ持ち、各配色がその2色を自分の背景色と文字色で定義し直します。画像のブロックにこのプリセットが指定されていれば、配色を変えるだけで画像の色も変わります。手元の確認では、ヘッダーの折りたたみ版と固定版、ヒーローのパターン「Hero Colophon」に置かれるサイトロゴがこの指定を持ち、Blue HourとGolden Hourの2つは投稿のアイキャッチ画像にも指定していました。ほかの配色ではアイキャッチ画像は元の色のままです。

サイトロゴを置いたヒーローのパターンを、既定、Blue Hour、High Noon、After Hours で表示した4枚。ロゴの画像が配色ごとの2色(デュオトーン)に塗り替わっている
ヒーローのパターン「Hero Colophon」に置いたサイトロゴ。既定では黒白、Blue Hourでは紺と水色、High Noonでは黒と黄色、After Hoursでは紫と桃色に塗り替わる。7.2 Beta 3で2026年11月2日に確認。

色の組み合わせについて、紹介記事はすべての組み合わせがウェブアクセシビリティの基準WCAGのAAレベル(文字と背景のコントラスト比が通常の文字で4.5対1以上)を満たすと説明しています。黄色の背景に黒い等幅文字のHigh Noonや、黒い背景に白い文字のEveningは、ブログの配色としては珍しい組み合わせなので、自分の記事と画像で読みやすさを確かめてから選ぶのが確実です。

57のパターンと11のテンプレートが、白紙を埋める部品になっている

テンプレートはページの骨組み、パターンはブロックを組み合わせた部品で、どちらもサイトエディターから使います。Ipsumの数は次のとおりです。

11

テンプレート(うちサイドバー付き4、見出しなしのページ1)

8

テンプレートパーツ(ヘッダー3、フッター2、ナビの重ね表示、検索、サイドバー)

57

パターン(挿入できるもの42、テンプレートやパーツ用の非表示15)

7

同梱フォント(すべてSIL Open Font License)

7 + 5

配色と書体のバリエーション

6

ブロックスタイル(引用符2、大きな見出し用のDisplay、はみ出しを隠すCrop Contents、コードのEvening、ロゴのSharp)

出典: WordPress開発版(trunk)の wp-content/themes/ipsum と、7.2 Beta 3で登録されたパターン数の確認(2026年11月2日)。

Ipsumのテンプレートはどれも中身が1行です。たとえばホームと一覧に使うindex.htmlは「ipsum/hidden-index」というパターンを呼ぶだけで、実際のレイアウトはパターンのPHPファイルにあります。表示用の11テンプレートのうち4つ(index、archive、single、pageのサイドバー付き)はカテゴリや最近の投稿を横に出す形で、1つは見出しを出さないページ用です。ヘッダーとフッターなど8つのテンプレートパーツも同じ作りで、ヘッダーは通常版のほかに折りたたみ版と固定版、フッターは通常版と幅広版から選べます。

挿入できる42のパターンは、投稿一覧(Archive)が8種類、ヘッダーが4種類、フッターが5種類、ギャラリーが5種類、文章のレイアウトが5種類(予定の一覧を含む)、ヒーローが2種類、ナビゲーションの重ね表示が3種類、ページ丸ごとのレイアウト(自己紹介、ブログのホーム、公開前の告知)が3種類で、ほかに連絡先、会員募集と検索の呼びかけ、推薦の言葉、自己紹介の行、音声とリンクの投稿形式があります。投稿一覧の8種類には、アイキャッチ画像を正方形のグリッドに並べる「Archive Photographic」から、大きな投稿タイトルと日付だけを並べる「Archive Minimal」までがそろっています。

スマートフォン幅(390px)では、右上のナビゲーションが三本線のボタンにまとまり、アイキャッチ画像、タイトル、本文、引用が1列に並びます。

幅 390px のスマートフォン相当で表示した Ipsum のホームと投稿ページ。ナビゲーションは右上の三本線のボタンにまとまり、アイキャッチ画像、タイトル、本文、引用が1列で縦に並ぶ
幅390pxで表示したホーム(左)と投稿ページ(右)。幅390pxの枠に検証サイトを読み込み、7.2 Beta 3で2026年11月3日に確認。

テーマのファイルから分かる細部:7種類のフォント、ページ移動のクロスフェード、functions.phpの中身

テーマの中身を読んで分かった細部をまとめます。フォントは、既定の本文に使うInter、サイト名や日付などの小さな文字に使うManrope、配色と書体のバリエーションで使うArchivo、Archivo Condensed、Besley、STIX Two Text、JetBrains Monoの7種類を、太さを連続して変えられる可変フォントの形で同梱しています。ライセンスはすべてSIL Open Font License 1.1で、readme.txtに著作権者と入手元が書かれています。

スタイルシート(style.css)の先頭には、ページを移動するときに前後の画面を重ねて切り替えるCSSの仕組み「ビュートランジション」の指定があり、対応するブラウザでは記事から記事へクロスフェードで移るように指定されています。段落と見出しには、行末の1語だけが次の行に残るのを減らす text-wrap: pretty の指定があり、長いURLは折り返して横にはみ出さないようにしています。リンクの点線の下線は !important で固定され、グローバルスタイルの設定で上書きされないようになっています。

Beta 3のfunctions.phpは短く、登録している処理は8つです。エディター用と表示側のstyle.cssの読み込み、ナビゲーションのウィジェットをHTML5の要素で出す設定という定型の3つのほかは、コメントへの呼びかけのブロックバインディング、サイドバー付きテンプレートの名前と説明の登録、パターンの「Pages」カテゴリの登録、検索ブロックにaria-label(読み上げソフトに伝える名前)を付けられるようにする設定、そしてコードブロックの「Evening」とサイトロゴの「Sharp」というブロックスタイルの登録です。テーマの見た目のほとんどはtheme.jsonとパターンに書かれており、リポジトリのREADMEも、CSSをできるだけ減らしてグローバルスタイルで設定できるようにする方針を掲げています。パターンに使われる画像は、テーマのデザインリードがMidjourneyで生成しCC0(著作権を放棄)で提供しているとreadme.txtにあります。Beta 4では、AIエージェントがAbilities APIを通じてIpsumの配色や書体、パターンの使い方を読み取れる「デザインガイド」の機能(inc/abilities.php)が加わりました。

既存のサイトを7.2に更新しても、テーマは変わらない

WordPress本体には新規インストールで有効にするテーマを決める定数WP_DEFAULT_THEMEがあり、7.1.4では twentytwentyfive、7.2 Beta 3では ipsum になっています。この定数は新しくインストールするときに使われるもので、通常の更新では使われません。手元で、Twenty Twenty-Fiveが有効な7.1.4のサイトを7.2 Beta 2へ更新したところ、有効なテーマはTwenty Twenty-Fiveのままで、テーマ一覧にIpsum 1.0が無効の状態で加わりました。Twenty Twenty-Four、Twenty Twenty-Threeも一覧に残っています。その後Ipsumを有効にしてBeta 3へ更新しても、有効なテーマは変わりませんでした。

既存のサイトを7.2へ更新する

  1. 有効なテーマはそのまま(手元ではTwenty Twenty-Five)
  2. テーマ一覧にIpsumが無効の状態で加わる
  3. 切り替えるなら、外観 > テーマで自分で有効化する
  4. サイトエディターで変えた色や文字の設定はテーマごとに保存されるので、Ipsumには引き継がれない

7.2を新しくインストールする

  1. Ipsumが最初から有効(WP_DEFAULT_THEMEが ipsum)
  2. ホームはサイト名、ナビゲーション、投稿本文だけの白紙
  3. 配色と書体はサイトエディターの「スタイル」で選ぶ
  4. ヘッダーやヒーロー、サイドバーはパターンとテンプレートから足す

出典: wp-includes/default-constants.php のWP_DEFAULT_THEME(7.1.4と7.2 Beta 3)、更新前後の wp theme list の結果、WordPressのテーマハンドブック(グローバルスタイルの保存先)。

Ipsumに切り替える前に確かめる3つのこと

1. 本番に入れずに触る

ブラウザだけで動くWordPress Playgroundに、Ipsumを有効にしてデモ記事を読み込んだ設定(ブループリント)がリポジトリに用意されている。7.2 Beta 2の発表にもPlaygroundのリンクがある。

2. 自分の記事を7つの配色で見る

配色で本文の書体が変わり、Blue HourとGolden Hourではアイキャッチ画像が2色になる。写真が主役のブログは、画像が元の色のまま残る配色(Sunrise、Morning、High Noon、Evening、After Hours)から選ぶ。

3. 切り替えはステージングで、12月8日の公開後に

ベータ版は本番サイトで使わない。既存テーマで変えた色や文字、テンプレートの編集はIpsumに引き継がれないので、本番と同じ構成の確認用サイト(ステージング)で切り替えて、作り直す量を見積もる。正式版は12月8日の予定。

Ipsumはまだ開発中で、リポジトリのREADMEは、スタイルのバリエーション(配色と書体)、投稿一覧のパターン、サイドバー付きテンプレートの3つを、特にテストしてほしい領域に挙げています。試して気づいた不具合や要望は、WordPress/ipsumのIssueで報告できます。

まとめ:白紙から始めるテーマは、既存サイトには何もしない

Ipsumは、2010年のTwenty Ten以来続いた年号の名前をやめた既定テーマとして、WordPress 7.2に入ります。中身は、サイト名とナビゲーションと本文だけの白紙に、7つの配色と5つの書体、57のパターンと11のテンプレートを足していく設計です。配色の多くは本文の書体まで切り替え、サイトロゴなどの画像は2色に塗り替わります。

すでにWordPressを運用している人は、7.2へ更新してもテーマが変わらないことを前提に、Ipsumを使うかどうかを自分で決められます。新しいサイトを白紙から始めるなら、Playgroundで自分の記事を7つの配色で見て、画像の扱いと書体の読みやすさを確かめてから選ぶと、切り替えてからの手戻りが減ります。

参考資料