「AIで作ったアプリは審査に落ちる」は誤解|Guideline 2.5.2の適用条件

2026年3月、AppleがAIアプリ開発ツールの更新を止めた

2026年3月、Appleが「バイブコーディング」と呼ばれる種類のアプリについて、App Storeでのアップデート公開を止めました。バイブコーディングとは、AIに言葉で指示するとアプリができあがる作り方のことです。

止められたのはReplitとVibecodeの2本でした。Apple製品を専門に扱う報道サイトが3月18日に相次いで伝えています(MacRumors9to5Mac)。Appleが根拠として挙げたのは、App Reviewガイドラインの2.5.2と、開発者がAppleと結んでいる契約(Developer Program License Agreement)の3.3.1(B)です。

さらに同月30日には、同じ系統のアプリであるAnythingがApp Storeから削除されました。

ここから「AIで作ったアプリは審査に通らない」という話が広がりました。ただ、2.5.2の条文と、Appleが各社へ実際に求めた変更を並べてみると、リジェクトの条件になっているのはAIを使ったことではありません。

この記事では、Appleが何を問題にしたのか、そして自分のアプリが2.5.2の対象になるかどうかを確かめる手順をまとめます。

この記事の結論

審査で問われたのは、AIが書いたことではありません

問題になったのは、配信したあとのアプリがユーザーの手元でコードを実行する構造のほうでした。

問われた構造

配信後の実行

アプリが新しいコードを取り込み、自分の中で動かす作りが2.5.2に当たります。

問われていないもの

AIが書いたコード

提出時に中身が確定していれば、開発でAIをどれだけ使っても条文の対象外です。

全員にかかる影響

審査待ちの長期化

申請の急増で、審査期間が数週間規模へ伸びたと報じられています。

2.5.2が禁じているのは、配信後のコード実行

この条項に触れた場合、審査結果には次の見出しが表示されます。すでにリジェクトを受け取っている場合は、手元の文面と見比べてみてください。

審査結果に表示される見出し

Guideline 2.5.2 - Performance - Software Requirements

「2」がPerformance、「2.5」がSoftware Requirementsという区分です。続く本文では、審査を通したあとにアプリの挙動や機能を変えられるコードが含まれている、という指摘が入ります。

ただ、この2.5.2はAI向けに作られた条項ではありません。App Reviewガイドラインには、生成AIやAI生成コンテンツを名指しした独立の条項自体が存在しません。

2.5.2のうち、今回のリジェクトの根拠になった部分は次の一文です。

Apps should be self-contained in their bundles, and may not read or write data outside the designated container area, nor may they download, install, or execute code which introduces or changes features or functionality of the app, including other apps.

Apple「App Review Guidelines」2.5.2、2026年7月27日閲覧、出典

条件になっているのは、アプリがコードをダウンロード・インストール・実行して、自分自身や他のアプリの機能を足したり変えたりするかどうかです。誰が書いたか、何を使って書いたかは出てきません。

つまり、Claude CodeやCursorにコードを書かせ、Xcodeでビルドし、できあがったものを提出する。この作り方は2.5.2の対象になりません。提出した時点で中身が確定しているからです。

問題になるのは、配信されたあとのアプリが、ユーザーの手元で新しいコードを受け取って動かす構造のほうです。

App Storeへの提出を境に左右へ分けた図。左は審査前の工程で、AIにコードを書かせる、Xcodeでビルドして動きを確かめる、できあがった中身を提出する、の3段階。右は配信後の状態で、アプリの中身が提出時のまま動くなら2.5.2の対象外、アプリがコードを取り込んでその中で実行するなら2.5.2に当たる、と示している。
2.5.2の対象になるのは、審査を通したあとにアプリの中身が変わる場合です。Apple「App Review Guidelines」2.5.2(2026年7月27日閲覧)をもとに作成。

なお2.5.2には、限定的な例外もあります。実行可能なコードを学んだり試したりするための教育目的アプリは、条件付きでコードをダウンロードできます。その場合、提供したソースコードをユーザーが完全に閲覧・編集できる状態にすることが求められます。

同じ条項でも、3社に求められた修正は違った

2.5.2の条文は抽象的なので、どこまでが対象になるかは、Appleが各社へ実際に示した修正内容から読むほうが具体的に分かります。

Replitに求められたのは、生成したアプリをアプリ内に埋め込んだブラウザ画面ではなく、外部ブラウザで開くことでした。生成そのものは止められていません。動かす場所をアプリの外へ出せば認める、というのがAppleの回答でした。

Vibecodeには、より重い条件が示されたと報じられています。Appleデバイス向けのソフトウェアを生成する機能自体を外すこと、という内容でした。

Anythingは、報道を受けて生成物をWebブラウザで開く形へ更新を申請したものの、Appleはその申請を却下したうえでアプリ自体を削除したと、開発者のDhruv Amin氏が9to5Macの取材に説明しています。

何が、どの順で起きたか

2025年12月

Anythingが更新をブロックされる

報道より前から、個別のアプリへの指摘は始まっていました。

2026年3月18日

ReplitとVibecodeの更新停止が報じられる

Appleは「バイブコーディングを名指しした新ルールはなく、既存ルールの適用だ」と回答しました。

2026年3月30日

AnythingがApp Storeから削除される

外部ブラウザで開く形への修正申請は通らず、アプリごと取り下げられました。

2026年4月5日

申請の急増と審査遅延が報じられる

審査の混雑は、バイブコーディングと関係のない開発者にも及びました。

2026年5月15日

Replitが4か月ぶりに更新を公開

CEOがXで「Appleと折り合いがついた」と述べました。何を変更したかは双方とも公表していません。

Appleは、開発者との連絡を続けていたとも説明しています。2か月間で3回の電話会議を含むやり取りがあったという内容でした。

今回のリジェクトで気になるのは、同じ2.5.2を根拠にしながら、求められた対応が「表示先の変更」から「機能の削除」まで開いていることです。条文を読むだけでは、自分がどの程度の修正を求められるかまでは読み切れません。

アプリの中で動かすなら、ガイドライン4.7の条件を満たす

では、アプリの中で何かを動かすこと自体が禁止されているのかというと、そうではありません。ガイドライン4.7が、バイナリに埋め込まれていないソフトウェアを提供できる形を挙げています。

認められる形

4.7が挙げている6つの提供物

HTML5とJavaScriptのミニアプリ

ミニゲーム

ストリーミングゲーム

チャットボット

プラグイン

レトロゲーム機・PCのエミュレータ

付いてくる条件

4.7.1〜4.7.5で求められること

  1. プライバシー規約、コンテンツフィルタリング、アプリ内課金ルールを守る
  2. 端末のネイティブAPIを、提供するソフトウェアへ露出させない
  3. データを共有する場合、ユーザーから明示的な同意を得る
  4. 提供するソフトウェアの索引とメタデータをAppleへ渡す
  5. 年齢レーティングの仕組みを実装する

出典: Apple「App Review Guidelines」4.7および4.7.1〜4.7.5(2026年7月27日閲覧)。提供するソフトウェアがガイドラインと法令に適合する責任は開発者側にあり、1件でも反していればアプリごとリジェクトの対象になります。

今回のバイブコーディングアプリが2.5.2でリジェクトされたのは、生成されるものがネイティブアプリで、4.7が挙げる6種類のどれにも当てはまらなかったためと読めます。ただしこれはAppleが公式に示した整理ではなく、公開されている報道と条文から筆者が読み取ったものです。

自分のアプリが2.5.2に当たるかを確かめる

ここまで説明した条件を、申請前に確認できる順番へ並べ替えます。

申請前の3つの質問

Q1. 配信したあと、アプリが新しいコードを受け取って実行しますか?

いいえ → 2.5.2の対象外です。開発でAIをどれだけ使っても関係ありません。ここで終わりです。

はい → Q2へ進みます。

Q2. 受け取って実行するコードは、4.7が挙げる6種類に当てはまりますか?

はい → 4.7で認められている形です。4.7.1〜4.7.5の条件を満たす設計が必要になります。

いいえ → Q3へ進みます。

Q3. 実行や表示を、外部ブラウザなどアプリの外へ出せますか?

はい → Appleが3月にReplitへ求めたのがこの形でした。

いいえ → 次のカードのケースに当たります。

Q3まで進んで「いいえ」だった場合

Vibecodeは機能自体の削除を求められ、Anythingは削除に至りました。設計を変えずに審査を通す方法は、公開されている情報からは確認できません。

実装を進めてから設計を戻すと作り直しの範囲が広がるので、この3つの質問には作り始める前に答えておくほうが、手戻りを減らせます。

AIと関係なく、審査待ちが伸びている

条文の話とは別に、App Storeの審査そのものが混んでいます。AIを使っているかどうかに関係なく、申請した全員の審査待ちが長くなります。

審査にかかる時間が変わった

従来

24〜48時間

1〜2日で結果が返ってくる想定でした。

2026年3月時点

7〜30日以上

数週間規模で見ておく必要があります。

約557,000件

2025年通年の新規申請数。2016年以来の多さでした。

84%増

単一四半期での新規申請の伸び。

注記: いずれもThe Informationの報道をTNWが2026年4月5日に伝えた数値で、Appleの公表値ではありません。審査期間は申請内容によって変わります。

個人開発だと、この審査待ちの長期化がリリース予定をいちばん狂わせます。公開日を決めて逆算する進め方をしている場合、審査待ちを従来の感覚のまま1〜2日で見積もると、公開日に間に合いません。

まだ確定していないこと

ここまでは、Appleの公式文書と報道で確認できた範囲の話です。確認できていない部分もまとめておきます。

  • Replitは2026年5月15日に4か月ぶりの更新をApp Storeで公開しました。ただしAppleもReplitも、審査を通すために何を変更したのかを公表していません。Vibecodeは6月時点でも更新を止められたままで、2026年7月28日時点で解決を示す情報を確認できていません。
  • Appleがこの運用をどこまで広げるかも示されていません。今回の3社はいずれも「アプリを作るためのアプリ」でした。生成物をアプリ内で動かす機能を一部だけ持つ通常のアプリがどう扱われるかは、公開情報からは判断できません。
  • 申請数と審査期間の数値は報道ベースで、Appleが公表したものではありません。
  • App Reviewガイドラインは随時更新されます。この記事は2026年7月27日時点の記載に基づいています。申請前に原文を確認してください。

今から申請するなら、何を先に決めるか

2.5.2の対象になるかどうかを決めるのは、開発にAIを使うかどうかではありません。配信したあとのアプリが、ユーザーの手元で何を実行するかです。

実装を始める前に、配信したアプリが新しいコードを受け取る場面を、一つずつ書き出してみてください。1つもなければ、AIをどれだけ使っても2.5.2の対象にはなりません。1つでもあるなら、4.7が挙げる6種類に収められるか、実行や表示をアプリの外へ出せるかを、実装より先に決める必要があります。

審査期間のほうは、アプリの設計に関係なく全員が待たされます。公開予定日から逆算するなら、従来の1〜2日ではなく、数週間分を確保してください。

参考資料